「漂う」(第二十四話)
第二十四話
あなたはかぼちゃの馬車に乗っていた。
向かうのは王子様のお城。
想いが伝わる保証などどこにもないのに、あなたの心は踊っていた。
決して恋愛対象ではなかった不思議な男の子に告白された。
人間の姿は仮の姿であると称すちょっと変わったその男の子は大学の知り合いで普段から仲良くしていた。
いつにもまして思い詰めた表情からその本気度は明らかだった。
あなたは正直に自分には好きな人がいることを伝えた。
けれどもあなたはドキドキしていた。好意を向けられることがこんなにもドキドキすることをあなたは知らなかった。
あなたは想う。
あれこれ考えているだけでは何も始まらないと。
そして、誰かを好きになり、誰かに好かれることがこんなにも素敵なことなのだと。
あなたはこのドキドキを無駄にしたくなかった。
勇気を出して告白してくれた男の子のためにも、あなたはあなたの恋ときちんと向き合わねばならなかった。
北風が頬に気持ちいいとあなたは思った。
向かい風はあなたを追い返す冷たい風ではなく、あなたを鼓舞する優しい風。
あなたは遠くを見る。
すぐ手が届きそうなくらい鮮明にあの人のことを想い描くことができた。
そして、あなたは現実を見る。
大好きなあの人に向かって。