「漂う」(第二十二話)
第二十二話
あなたはかつて何度となく経験してきたことを再度経験した。
容姿やキャリアが相対的に人より秀でているとあなたは素直に自覚し、認めてからというもの、同性異性を問わず告白されることがさらに増えた。
そしてまた。
「こうしてご飯をともにしただけで判断してるような軽いものだと思われるかもしれない。でも、その声、その立ち振舞い、そのあらゆるすべてに惹かれました。好きです」
週に一度のホットヨガでインストラクターをしているときの生徒の男性にご飯に誘われ、告白された。
あなたはその真摯な、紳士な態度に良い印象を抱いた。
軽い判断ではないことがうかがえた。心の声に正直になって生み出したものだと感じることができた。
あなたは想う。
どうして追われるとこうも気持ちが盛り上がらないのかと。
一歩引いたところにあなたはいた。
俯瞰してあなたはあなたと彼を見る。
あなたはどこまでも追いかける人間だった。
追いかけて追いかけて、手が届かないからこそ余計に焦らされ焦がれていく人間だった。
あなたの身体はどこまでも素直だった。
熱くなる部位はなく、至って冷静だった。
ただ冷静にその告白を見ることしかできなかった。
「気持ちを伝えられてよかったです。今日はありがとうございました」
あなたは想う。
その潔い去り際に何か熱く感じるものがあると。
思わず止めようと差し出した手を収め、あなたはあなたが望むものを求めてみようと決めた。